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アロマスクール 日本ホリスティックケア研究所のトップ > ブログ > 下咽頭がん末期 Y氏へのアロマトリートメント

2011-10-10  下咽頭がん末期 Y氏へのアロマトリートメント

2004年、ホスピスでがんの患者さんにアロママッサージを始めて5年目に出会った
Yさんへのアロママッサージ施術記録です。

Yさんは、下咽頭がん末期でホスピスに入院されている50代半ばの男性で、顔色も良く、歩行も出来、食事も普通食、タバコが大好きで、一見すると病気とは分からない方でした。

初めてて病室に伺うと、むっつりした様子で、「首の左にがんの病巣があるので、
左の肩が凝っている」とだけ、おっしゃいました。
左の頚部には、下咽頭がんの腫瘍が盛り上がっていて、首から肩の筋肉を圧迫していました。そのために肩の筋肉がカチカチに硬くなっていました。

背中と肩のマッサージをするために横向き(側臥位)になっていただき、アロママッサージを始めました。背面上部を軽くマッサージした後、左の肩の硬くなった筋肉を、丁寧に圧を掛けすぎることなく施術しました。
「そこだね、一番凝っているのは。」と目を閉じて仰り、頚部の病巣に触れないように注意しながらマッサージしました。

背中のあとは上肢(腕)のトリートメントを行っていると、
「大分ほぐれてきましたね」と言うと、「とても楽になった。もっと前から、こういうの(アロママッサージ)をやっておけば良かった」と仰いました。
この日から、隔週でアロマトリートメントをスタートしました。

3回目のトリートメント
病室に伺うと、ベッドで本を読まれていました。
「アロマトリートメントに来ました」と声を掛けると、本を閉じて、自分でシャツを脱ぎ、いつもの側臥位の態勢をとってくださいました。
そして、「肩の凝りがずいぶん良くなったよ。柔らかくなったでしょ」と嬉しそうに仰いました。

「今日、英語の辞書を買ったよ。」と仰るので、「何か英語の本でも読まれるのですか?」と伺うと、「何となくね。英語のフレーズを忘れないようにしたいだけだよ。」と。
海外生活が長かったYさん。懐かしむような表情をされていました。

「人間は一生勉強だからね。看護実習で若い看護師さんが来て、若い人はどんどん恋をして、いろんな経験を積むと良い。失恋しても良い経験だ、と話すんだよ。」
「良い思い出をたくさん作ることだよ。だから、僕と良い思い出を作ろう、と言っているんだよ。」と茶目っ気に笑われていました。

5回目のトリートメント
この頃、時々、声を出しにくくなるようで、
「このままガンが進行すると声帯が圧迫されて話せなくなるよ」と仰るので、
「それまでにたくさんお話を聞かせてください」と言うと、
「良くなっても悪くなっても、こうしてマッサージをしてもらうことで、気持ち良く感じれて、いま自分が生きているという実感が持てると良いと思うんだよ。」と仰っていました。

この日も背中から上肢のマッサージに移ると、
「こういうの(マッサージ)をしてもらって気持ち良く感じる時に、白亜の馬車でお迎えに来てくれるといいなぁ。」と仰いました。
私が、「いいですねぇ、私もそういうのが良いです」と言うと、
「最高だよなぁ〜」と言いながら、目を閉じておられました。

そして、
「僕は何故生まれたのかわからない。だから、もう少し自分のことを知りたいと思う。好奇心だよ。人間、一生勉強だからね。生きている以上は、命のある限り、自分というものを見つめていきたいと思うよ。」と仰いました。

8回目
ベッドの上でウトウトされていて、
「今日は調子が悪く、あまり話せない」と仰いました。
寝たままの状態で、目も閉じたまま、起き上がるのも大変そうなので、
上着を着たまま、パシャマの上のボタンをいくつか外して、肩のアロママッサージを行うことにしました。
「やっぱり、(アロマ)マッサージをやってもらうと楽になる。」と仰って、
肩から腕のマッサージに移ると、少しずつお話を始められました。
施術後、売店でジュースを飲まれていて、お顔色も少し元気になられていた様子でした。

10回目
声を出すのも辛い様子で、始終目を閉じておられました。
2〜3日前から激しい痛みがあるとのこと。
マッサージを始めると、ご自分で三角筋を指で示し、「ここが痛い」と訴えられた。
痛い場所をエフルラージュでさすっていると、「少し楽になった」と穏やかな表情になりました。

Yさんは、このあと、天国に旅立たれました。

ホスピスでアロマテラピーを行うことは、決して提供するばかりでなく、多くのことを学ばせていただく機会だと思っています。
Yさんとの約5か月間、病気と真正面に向き合い、最後まで「自分とは何か」を探求されていた姿に接することで、私自身にとっても、「アロマセラピストとして生きる」ことの意味を考えるる時間になったと思います。


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