アロマスクール IFA認定 日本ホリスティックケア研究所

2011-09-28 初めてがん患者さんにアロマを施術した日の記録

ちょうど、今から13年前の9月に、初めてガン患者さんにアロマの施術をしました。
整理していたら、その時の日記が出てきました。
失敗談もあるので、公開するべきか考えましたが、これからがん患者さんにアロマの施術をする人に役立つかも知れないと思い、公開することにします。

当時の私は、2校目のIFA認定コースを1年半前に卒業して、一般の方にアロマテラピートリートメントを行うと同時に、病院を回ってアロマの紹介をしたり、消臭スプレーを作るなどのボランティア活動をしていました。
この患者さんも、ボランティアをした病院の関係で、患者さんのご自宅に伺った時のことです。
当時、がん患者にアロマテラピーの施術をするという活動はほとんどなく、私の周りにも、がん患者さんにアロマの施術をしている人は誰もいませんでした。
事前にアロマの学校のジャーメイン先生から、がん患者さんへのアロマ施術を教わりましたが、実践は初めてでしたので緊張しました。

1998年9月30日
60代前半で、乳がんの女性。左の乳房摘出手術をされていて、骨転移あり。
現在は寝たきり状態。会話は普通にできます。

お部屋に入ると、クライアントはベッドに横になられていて、とてもお綺麗な老婦人でした。
お部屋には、患者さんの姉妹3人がいらっしゃって、これから私が何をするのか、興味をもって見ていらっしゃいました。

最初はご挨拶と思い、「ご気分はいかがですか」と尋ねると、
クライアントは、「私、そう尋ねられるのが一番困るの」と仰いました。
お体の良くない状態が続いているときに、申し訳ない質問をしてしまったと反省しました。
そしてクライアントは、「私、グレープフルーツの香りが好きなのよ」と仰いました。精油の選択をどうしよう、と思っていたことと、グレープフルーツだと希釈濃度に気をつければ問題ないかと思い、グレープフルーツの精油を使用することにしました。

このクライアントは、以前アメリカにお住まいになられていて、ご友人からアロマオイルをプレゼントされたのが、初めてのアロマとの出会いだそうです。
ご友人からプレゼントされたのもグレープフルーツだったようで、皮膚に付けるのではなく、お部屋に香らせて使用されたようです。

グレープフルーツは光毒性があります。お部屋には大きな窓があり、太陽の光がうっすらと差し込んでいました。真夏の太陽ではないことと、窓にはカーテンが掛けられていたので、念のため、光毒性の影響を受けない低濃度の許容使用レベル以下の状態に希釈して、使用することにしました。

上肢のトリートメントを始めると、クライアントは、「あ〜、なんて気持ちが良いのでしょう!」と何度もおっしゃっていました。「病気になって、アロマが受けられるなんて、思ってもみなかったから嬉しい」とも。

側で見ていた姉妹3人が口々に、「何て良い匂いでしょう。」と仰っていました。そして、「これだったら、私たちにも出来るかしら?」と尋ねられたので、
「ええ、出来ますよ!」と答えて、簡単なアロママッサージの方法をお教えしました。

2週間後にアロマトリートメントの予約を入れてくださいました。
私は初めてのがん患者さんへのトリートメントで緊張し、終わってホっとしました。

この患者さんのところには、その後、2回伺いましたが、3回目の施術前に安らかに息を引き取られました。初めての患者さんで、初めてお亡くなりになる、ということを経験し、ショックでした。

ジャーメイン先生は、「アロマセラピストとしての経験が少ないうちは、自分の患者さんが亡くなると、自分を責める気持ちになることがある」と仰っていたので、少しは冷静に居られたのですが、分かっていながらも、自分を責める気持ちになってしまいました。

しばらく落ち込みましたが、それから何人ものがん患者さんへのアロマを経験していくうちに、自分を責める気持ちは消え、「たとえ2回でも、患者さんがアロマでリラックスしていただき、とても喜んでくださったので本当に良かった。」、と思えるようになりました。

ジャーメイン先生は、がん患者さんにアロマをする前には、解剖生理学や病気、がんについて勉強しておくことと、正しいアロママッサージを学んでおくこと。そして、一般の、それほど重篤な病気ではないクライアントにアロママッサージを1年間ほど行い、アロママッサージに対してクライアントがどのようにリアクションするか経験しておくことが必要、と仰っています。(ただし、看護師などの医療従事者や患者さんのご家族の場合は対象外)