山崎恵美子 病院におけるアロマテラピートリートメント報告 「リハビリ直後の患者さん」

病院におけるアロマテラピートリートメント報告 「リハビリ直後の患者さん」

私は2年前から東京都内の病院で入院されている患者さんに、病室で部分的なアロマトリートメントを行っています。この病院には、緩和病棟・一般病棟・介護療養型医療病棟があり、約10年ほど前からアロマトリートメントボランティア活動が続けられています。最初はベンゼルさんが1人でスタートした活動でしたが、現在はVivatホリスティックトレーニング校の卒業生4名で月に2~3回行っています。

始めたときは、ボランティア活動ということで使用するものすべてが持込だったようですが、病院と患者さんに必要とされるようになり、現在では精油以外の使用するものを病院で用意していただけるようになりました。

この病院には約200名の方が入院されていて、病棟は6つにわかれています。施術をする患者さんはドクターからの許可がでていて、病棟と部屋番号、病名、氏名、年齢、施術部位が記載されているリストを当日に渡されます。各病棟から4名くらいづつ約24名の患者さんを4名のスタッフで手分けして施術をします。患者さんの状態にもよりますが、お1人に約20~30分の部分的なトリートメントを行います。そして、お名前とその日の使用オイル、乾燥や冷えや浮腫の程度、反応などを記録用紙に記入し、病院のボランティア担当者に提出します。このリストは病棟ごとにファイルし、毎回患者さんの経過状況や注意事項などを確認できるよう記録用紙に継続して記入します。私たちアロマセラピストは病院に行き、施術リストを見て記録用紙をファイルから探します。記録がない場合は初めてアロマトリートメントを受ける患者さんだということがわかります。

病室には、リスト・記録用紙・ティッシュ・ウエットティッシュ・タオル・ベースオイル・精油を持っていきます。タオルは衛生的な問題もありますので、患者さんのタオルを使用させていただくよう病院側にご協力いただいています。

病棟に行くとまずナースステーションに挨拶をし、施術する患者さんが当日の発熱や体調の変化などの確認をします。そしてリストに記載されている病室に行き、患者さんに明るく挨拶をします。
病名はリストに書いてあり、こんな感じかしらと想像して患者さんの病室へ行きますが、 同じ病名であってもその病状は人それぞれ、後遺症の出る場所も違っています。

ですから、挨拶をして返事が返ってきたらお話ができる方だと判断できたり、聞こえていそうだけどなにか?という表情だったら耳が遠いのかしらと大きい声にしてみたりします。中には全く反応が見られない方もいらっしゃいますし、何しに来たの?という方もいらっしゃいます。アロマトリートメントを始める前に精油をティッシュに垂らして香りを漂わせ、これからトリートメントを始めることをお話します。精油は柑橘系や以前香ったことのあるお花や、樹木の香りが受け入れてもらいやすいようです。いい香りねと言っていただきますが、中には香りに敏感な方、香りが嫌いな方もいらっしゃるので、なるべく控えめに使用するようにしています。

声がけで反応が見られない方とのコミュニケーションの取り方をどのようにしたらいいか・・・ 筆談をしたり、ジャスチャーをしたり、手の握り方で決めたりします。全く反応が見られない方でも精油の香りで目がキョロキョロと動いたり、大きく息を吸い込むようにしたり、呼吸の速度、顔の表情などいろんな合図がありますので、それをできるだけ見逃さないようにしながら施術をします。

匂いが感じられないという患者さんもいらっしゃいますので、このような場合はタッチングで気持ち良さを感じてもらえるようにトリートメントをします。

スクールで学んだ解剖生理学はベースになる知識として大変役にたっています。その上で、目の前にいる患者さんにどのように施術したらいいのか、どんな精油を使用するかを判断します。患者さんについて何か確認が必要な場合は看護師に尋ねます。施術をするときに自分に自信がなく、恐る恐る患者さんに触れているのでは気持ちのよいトリートメントはできません。

施術をしながらずっとお話をしている場合もありますが、大体の方はうとうとしたり、いびきをかいて寝てしまいます。そして、トリートメントが終わったときに、気持ちよかった、指が動くわ、体が軽くなった、優しい手だったわ、今日はぐっすり眠れそう、ありがとう、今度はいつ来るの? お見舞いにいらしているご家族からいい香りですね、などと言っていただきます。私たちも元気をもらっているように感じます。アロマトリートメントを心待ちにしてくださっている患者さんが多いのはとても嬉しいことです。

ボランティアを始めた頃、リハビリが終わった直後の患者さんにトリートメントに行った時のことです。何もしたくないという雰囲気で両手をギュッと握り締めて目をつぶって体が緊張している状態になっていました。たまたま看護師さんが病室に来て、リハビリで大変疲れたみたい、またリハビリの続きをすると勘違いされているのかもと。そしてこの方はお花がとっても好きなのよ、とお話してくださいました。私はラベンダーの精油を手に取り、ほんのりと香っていただくようお顔のそばへ。すると次第に呼吸がゆっくりになってきて、ギュッと握られていた手が少しずつ開いてきて体の緊張がほどけていくのが目に見えてわかりました。しばらく芳香浴をしてもらい、ゆっくりとしたペースで手と足の施術をしました。終わる頃には安心したような表情で寝息を立てていらっしゃいました。香りが心と体を解してくれたようです。もちろん患者さんのことを思って触れるということも重要です。精油と触れるということが深いコミュニケーションをもたらせてくれたと実感できた出来事でした。アロマテラピーは、医療では補えないところをメンタルな部分も考慮しつつ、その人に働きかけるというアプローチをこれからも行っていきたいと思っています。

病院は大変理解があり、受け入れ態勢が整っていてとても活動がしやすく感謝しています。また、今までのボランティアスタッフが病院との信頼関係を築いていたからこそ今の活動ができていると感謝しています。また、4名スタッフがいることで、こんな時はどうしたらいいかなど相談ができますので、仲間がいることも心強いです。

山崎 恵美子
Vivat Holistic Training IFA認定アロマテラピーコース卒業
http://aromamind.jp/
yamazakimassage@aromamind.jp


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