石巻赤十字病院でのアロマセラピー活動 「~がん診療にアロマテラピーを~」 伊藤寛子

私は宮城県のがん診療連携拠点病院のひとつである石巻赤十字病院にて、入院中のがん患者様へアロマセラピートリートメントを提供させていただいております。
きっかけは、昨年の震災後に石巻赤十字病院内に設置された『リフレッシュルーム』でのアロマボランティア活動でした。リフレッシュルームでは、災害診療、支援に奔走する医療従事者の方々へアロマハンドトリートメントなどを行っておりました。ボランティア終了後も、石巻赤十字病院でお知り合いになりました臨床心理士さんを通じて石巻市役所や石巻保健所よりご依頼をいただき、石巻市内でアロマ講演をさせていただく機会がありました。

現在は、比較的全身状態の良い術後の入院患者様へアロマトリートメントを提供させていただいておりますが、主治医の先生や看護師長さんの多大なるご協力のもと、大変スムーズに活動ができていることに心から感謝の念を抱いております。

患者様へのファーストアプローチは主治医の先生からのご提案ということもあり、アロマセラピーを全くご存知でない患者様でも不安感を感じられることなく施術を受けて下さっています。
患者様に関する留意点は主治医の先生からあらかじめ教えていただくことで、安全にかつ効果的な施術ができるよう準備をします。また、当日の施術人数と時間に関しては、患者様のリハビリ時間など施術当日のご予定を考慮した上で、看護師長さんが予定を組んで下さり、前もって連絡を下さいます。

トリートメントルームとして病院側が準備して下さっている個室では、患者様にリラックスして施術を受けていただけますよう、音楽をBGMとして用意したり、出来る範囲内で様々な工夫をしています。

患者様へは、トリートメントの前に必ずその日のご体調やご気分、主訴、アレルギーの有無や服用中のお薬の有無などを確認します。そして、お伺いした内容に沿って精油の選択を行うのですが、『お気に入りの香り』や『初めて嗅ぐ香り』に出会った時に、パッと表情が明るくなられる患者様も多くいらっしゃり、嗅覚を通じてダイレクトに脳に働きかける精油の効能を改めて再確認します。

患者様がご家族の方とご一緒にトリートメントルームにお見えになられる場合もあります。そのような時は施術を行いながら、ご家族の方に『アロマセラピーがどのように心身に働きかけるのか』、『施術がどの部分の筋肉に働きかけているのか』、『皮膚への作用』、『ご自宅でもできる簡単なトリートメントのやり方』などをお伝えするようにしています。

また、アロマセラピーに関心のある看護学生から見学の申し出を受けることもあります。そのような時は患者様の了承を得た上で、施術前のコンサルテーションから参加していただいています。

入院中は普段と違う生活環境の中でなかなか寝付けなかったり、良眠が取れなかったり、不眠やストレスに起因する便秘、長時間の仰臥位からくる背部や腰部の筋肉痛を訴える患者様が多くいらっしゃいます。

患者様が少しでも楽になっていただけるよう、限られた時間の中で、心地良く身を委ねることができ、且つより効果を得られる身体の部位を選択し、その方に合った圧を用いて施術をさせていただいております。

実際にアロマセラピートリートメントをお受けになられた患者様は、『入院中にこんな思いができるなんて夢にも思っていませんでした!』、『アロマはとても心地良くて・・・全身麻酔をかけられてスーッと気が遠くなっていく・・・あんな感覚です!』、『肩や脚がすごく軽くなった!』、『モヤモヤしていた頭がすっきりした!』、『先生からアロマを受けてくださいと言われた時は、とっても嬉しかった!』など、初めてアロマを受けられる患者様からも大変好評をいただいており、『外来でもアロマを引き続き受けたい』とおっしゃる患者様がとても多くいらっしゃいます。

緊張していた身体が緩むと、心も緩みます。
施術中に心身の緊張が解けて短時間でも深く入眠される方、ご自身やご家族のお話をしてくださる方、施術を受けながら前向きな気持ちに変化していかれる方・・・。医療従事者ではないアロマセラピストという存在だからこそ、遠慮なくお話してくださることもあるように感じます。

がん補完代替医療ガイドライン・第一版』(特定非営利活動法人 日本緩和医療学会作成)においてもアロマセラピーの有効性は推奨されていますが、補完代替療法としてのアロマセラピーに対する一般的な認知度が十分とは言いがたい昨今、石巻赤十字病院におけるがん患者様へのアロマセラピーの取り組みは、東北地域では大変革新的なものであると感じております。

がんの積極的治療と並行して、緩和ケアとしてのアロマセラピーはいつでも取り入れることが出来ます。ストレスや不安感の緩和や治療の副作用の緩和を目的に、がんの患者様には早いステージからアロマセラピーを取り入れて、少しでも明るく前向きな気持ちで治療に臨んでいただきたいと願っています。

私の夢は、がんの患者様が治療と並行して補完代替療法としてのアロマセラピーを自由に選択していただけるようになることです。

そのためには、セラピストも病気に関する深い知識を身につけ、患者様の症状に合わせた適切な施術を行うことで、医療従事者の方々からのアロマセラピーへのご理解と信頼を得ることが必要不可欠であると感じています。

これからも、母校で学んだ知識や技術を活かし、安全で正しいアロマセラピーが副作用なく、辛い症状を和らげる一助となることを、お一人でも多くの方に知っていただけるよう地道に活動を続けて参ります。

そして、患者様、クライアント様から『出会って本当に良かった・・・』と思っていただけるセラピストでありたいと思います。

最後に、石巻赤十字病院でのアロマセラピー活動開始にあたり、初日に東京から石巻まで応援に駆けつけて下さったベンゼル智子先生に、心より感謝を申し上げます。私がVivat Holistic TrainingのIFAプロフェッショナルコースに在籍していた頃、ベンゼル先生が『皆さんにはIFA合格を最終目的にして欲しくない。ご病気の方にも安全にアロマを提供できるレベルの高いセラピストになっていただきたい』と情熱的におっしゃって下さったことを今でも鮮明に覚えています。卒業生ひとりひとりをいつも温かく見守って下さり、適切なアドバイスで継続的にサポートして下さるベンゼル先生へ、あらためて深く御礼を申し上げます。
IFA認定アロマセラピスト 伊藤 寛子
Holistic Aromatherapy Salon AROMAZIA 主宰
http://www.aromazia.net/


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