牧野和子 がん患者さんと、原因不明の疼痛を訴える患者さんへのリフレクソロジー実践レポート

がん患者さんと、原因不明の疼痛を訴える患者さんへのリフレクソロジー実践レポート
牧野和子 (ベイリースクール認定講師)

リフレクソロジーの実践を通して強く感じることは「苦痛を与えること無く、苦痛を和らげる」セラピーであるという事です。多くのリフレクソロジストが同様に感じられていると思いますが、今回は私の症例をご紹介します。

症例1

ある末期がん患者を見舞った際、廊下にまで響き渡る苦痛の声を上げていました。横隔膜の痙攣による呼吸困難で非常に苦しんでおりました。看護師は冷氷パッドを患者に渡すと病室を立ち去りました。特に施せる処置は無いとのこと(おそらく病院によって対応は様々だろうと思います)。あまりに苦しむ姿を見兼ねて、許可を得て足を触り始めました。始めに横隔膜の反射区に触れると呼吸が変化したので足からの作用が有ると感じ、ゆっくりとしたペースで頭部、呼吸中枢、気管、気管支、肺、横隔膜、太陽神経叢、副腎に意識をはらいながら施術しました。患者に負担を掛けないように呼吸の様子を見ながら優しく反射区を刺激しました。10分くらい経つ頃から徐々に呼吸が整い始めて、患者さんは会話を始めました。今まで自分がどんな思いを大切に生きて来たのか、自分の死後に気に懸ることは何か、穏やかな呼吸の元でごく普通に会話をなさいました。大切にしていた盆栽を譲りたい人の当てを話されたので、その旨をご家族にお伝えする約束をして病室を出ました。同行した娘から、「なんだか遺言を聞きに来たみたいだね・・・。」と言われましたが、私も同じように感じていました。そして、医療的処置とは別に人間の手で施せる事が有るのだという事も感じていました。

スクールでは症状の改善を目的として、1クールとして6~8回の定期的なトリートメントを勧めています。トリートメントの回数や頻度が与える効果も有るのではないかと思い2か月間に6回のトリートメントを受けて頂くことを条件に9月から20人にモニタートリートメントを行いました。
個人差は有るものの概ね全員、何らかの症状の改善を見ることが出来ましたので紹介します。

症例2

クライアントは79歳、女性。夫の叙勲に伴う多忙とストレスが原因と思われる体調不良。身体に強い痛みと激しい物忘れの為、日常生活に支障をきたす状態が夏から続いている。
1回目のトリートメント終了後、クライアントは「あれ~?あれ~?」と呟きながら何度も椅子から立ったり座ったりを繰り返す。どこかにつかまらなくては立てないし動き出せなかったのに、痛みを感じずに立って動けたことを不思議がる。膝と腰の痛みが無くなっているとのこと。クライアントはトリートメント中に痛みは感じなかったが、仙腸関節の反射区付近の施術中に何か温かいようなムズムズした感じが脛から膝にかけて上るのを感じたとのこと。
3回目の時、「私の足きれいになったでしょう?」と言われる。寒い時期でもあり、足を覆ったままトリートメントをしていてふくらはぎをよく観察していなかった。クライアントによれば、ほぼ全身に赤い発疹が出ていて病院を受診したが、なかなか治らなかったのに、すっかりきれいになったとのこと。むくみが取れてすっきりしたとは感じていたが、ふくらはぎの皮膚の状態を確認していなかったことを反省。偶然、症状が消失する時期が重なったのかも知れないがクライアントのふくらはぎの発疹は消えていた。
体の発疹も無くなったとのこと。
4回目の時、クライアントはお化粧をして来る。表情も明るくなり、血色も良くなった。友人からも「元気になったね。」と言われると嬉しそうに話す。
身体の痛みはほとんど無く、時折痛んだとしても以前のような痛みではないとのこと。
今まで、放置していた庭の草取りを行ったと報告される。
このクライアントには10月からトリートメントを開始し、毎週のトリートメントを6回、その後は2週間に1回、そして1ヶ月に1回のペースで現在もトリートメントを継続している。
友人と旅行にも出かけ、年末には餅つきも行えるほどお元気になられた。
ご本人の言によれば、「すっかり元に戻った気がする。」とのこと。初めは懐疑的だったご主人からは、「確かに元気になった。それに最近はガミガミと小言を言わなくなったな。」と言われたと笑っておられた。
リフレクソロジーを全く知らないクライアントであったが、トリートメントはとても気持ちが良くて楽しめた様子。 「楽だね~、なんだか楽だね~。」を連発されていた。

上記以外の変化としては、
・物忘れは、気が付けばほとんど気にならなくなっていた
・寝つきが良くなり、目覚めに爽快感が有る、夜中に起きることが無くなる
・冷えが改善して足が温かい、靴下1枚でも大丈夫、以前よりも薄着で過ごしている
・老眼鏡が合わなくなり、度数の弱い眼鏡に変えた など

初回は車で送って来てもらったクライアントが、軽々と自転車に乗っていらっしゃる姿を見るのは喜ばしい限りである。
このクライアントの足は年齢の割には筋肉質でしっかりとしていた。おそらく長年の農作業で身体が鍛えられていたことが、トリートメントに相乗効果をもたらしたものと思われる。
クライアントも私自身も予想以上の効果を実感したケースであったが、クライアントはリフレクソロジー以外のセラピーも治療も受けてはおらず、リフレクソロジーが何らかの作用を及ぼしたことは確実であると言えよう。


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